介護における要介護者の尊厳に配慮する工夫

介護の仕事は体の動きが不自由な要介護者をサポートするイメージがあるが、単に身体的な介助作業だけではなく、精神面のケアも重要である。要介護者によっては自分が介護の対象になるのを嫌がることがあるが、これは介助作業の多くが個人のプライバシーに深く関与するためだ。特に着替えや排せつのように、家族にも見せない行為を第三者である介護職の人に手伝わせることに抵抗を感じる要介護者は決して少数ではない。

自分でできて当たり前のことができない事実は個人の尊厳を深く傷つけるため、介護に従事する人は要介護者への配慮が必要となる。そのため、相手を労わり、思いやる心を持つことが正しい介護を行うための条件だ。要介護者の尊厳に配慮する介護を行うには、当事者に恥ずかしさや苛立ちを感じさせないことが重要である。特に素肌を晒したり排せつに関係する介助作業はできるだけ時間をかけず、効率的に行うことが大切だ。時間をかけ過ぎると要介護者は自分のせいで介助作業が遅くなっていると考えてしまい、介護サービスを利用することを嫌がってしまうためである。

また、他人の目に触れることも要介護者にとっては大きなストレスとなるので、周りに人がいない状況で介助作業を行うのが賢明と言える。どうしても他人の目が避けられない場合はカーテンなどで目隠しをするなどの工夫が効果的だ。介護施設にもよるが、要介護者ごとに時間帯を区切り、別室で介助作業を行うことで他人の目を避けるように工夫されている。