要介護者の尊厳と配慮の方向性について

介護において最も大切なことは相手への配慮である。介護は単純に体の自由が利かない要介護者を支援するだけではなく、心のケアにも配慮する必要がある。要介護者は生活を送る際に多くの行動を他者の介助作業に依存しなければならない。本来ならできて当たり前のことができない事実に焦りや不安を感じているのが実情だ。さらに、着替えや排せつなど家族にも見せない事を第三者である介護施設の職員に手伝わせるのは大きな羞恥心に繋がる。自分ひとりでは何もできないと劣等感に苛まれる要介護者も決して少数では無い。そのような人に対しては尊厳を傷つけないように細心の注意を払って接することが肝心だ。

配慮する方法は人それぞれであるが、ひとりの人間として敬意を持って接することが重要である点は共通している。介護の現場では稀に、要介護者に対して乳児のように接することがあるが、相手を乳児と同レベルに扱うのは非常に失礼な行為だ。大人が乳児のように扱われるのは成人ではないと見下されているのと同等であり、要介護者の尊厳に対する配慮はない。介護は体の自由が利かない人に対する適切なサポートが目的であり、決して子供として扱うことでは無い。

相手に対する尊敬の気持ちが欠けていると適切な配慮ができないのは当然なので、介護のあり方について正しく学ぶことが大切と言える。要介護者への身体的なサポートだけではなく、心のケアにも注視することが介護業界全体が取り組む課題だ。